不妊症

不妊症とは

不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交渉をしているにもかかわらず、一定期間(一般的には1年間)妊娠しない状態のことを指します。ただし、ご年齢によっては1年を待たずに検査や治療を行った方が良い場合もありますので、ご不安な場合にはお気軽にご相談ください。

不妊の原因

不妊の原因は女性側、男性側、あるいはその両方にある場合もありますが、はっきりとした原因がわからない場合もあります。

女性側の主な原因

  • 排卵因子
    規則的な月経がある女性では、月経の2週間前に排卵が起こりますが、極度の肥満や体重減少があった方、多嚢胞性卵巣症候群の方では排卵するまでに時間を要したり、排卵が起こらないこともあります。
  • 卵管因子
    卵子と精子は卵管で受精するため、卵管の通りが悪いと卵子と精子が出会えません。
    卵管の通過性を確認するための検査には子宮卵管造影や卵管通水検査などがあります。
  • 子宮因子
    子宮筋腫や子宮腺筋症、先天性子宮形態異常など子宮の形の変化によって、受精卵が着床しにくくなっていることもあります。子宮内膜ポリープの存在も着床を妨げる可能性があると考えられています。
  • 加齢による影響
    加齢により卵子の数と質の低下が起こり、妊娠しにくい状態になります。

男性側の主な原因

  • 精子の問題
    動いている精子が少ない精子無力症や精子の数が少ない乏精子症、精液中に精子を認めない無精子症などがあります。
    当院では自宅で採取した精液を持ち込んでいただければ検査が可能です。
  • 性交時の問題
    射精障害やED(勃起不全)により腟内に射精できない。
    射精障害の方にはシリンジ法や人工授精などで対応いたします。
    *EDの方は男性不妊クリニックへ紹介させていただきます。
  • 加齢による影響
    加齢により精子の質の低下が起こります。

主な不妊検査

女性側の検査

  • 内診・経腟超音波検査
  • 血液検査
    クラミジア抗体、E2、LH、FSH、P4、PRL、TSH、FT4、AMHなど
    月経3日目頃のE2、LH、FSHは基礎値と呼ばれ、卵巣機能の評価に有効です。
    AMH(抗ミュラー管ホルモン)は卵巣予備能・卵巣年齢とも呼ばれ、卵巣に残っている卵子の数を反映すると言われています。ただし、将来の妊娠の可否を決めるほどの正確なものではありません。治療のステップアップの時期やART時の採卵個数の予測に有用です。
  • 卵管通水検査
    当院では超音波下卵管通水検査を行っております。
    月経開始より検査当日までは避妊をしていただき、検査日の朝は食事を控えてください。飲み物はお水、お茶にしてください。検査後には感染予防に抗生剤を処方いたします。
  • フーナーテスト
    排卵直前の子宮頸管粘液と腟内に射精された精子の相性をみる検査です。
    経腟超音波で排卵日の推定を行い性交渉のタイミングを指示し、性交渉を取られた翌日に受診していただき検査を行います。

男性側の検査

  • 精液検査
    当院ではSQA-iOという精子自動分析器を使用して精子の濃度、運動率、形態だけではなく、男性の妊孕性の予測に寄与する因子であるSMI(精子運動率指数)も測定できます。

不妊症の治療

治療にはタイミング療法、人工授精、ART(生殖補助医療)があります。

長らく生殖医療に携わってきた経験を活かして、ご夫婦にとってどの治療法が最適なのかを考え提案させていただきます。 また、当院ではARTは行っておりませんので、ARTが必要と判断された方には責任をもって近隣の施設に紹介いたしますのでご安心ください。

タイミング療法

「子どもが欲しいけれどなかなか妊娠しない」という場合には、一般的な不妊治療であるタイミング法というものからまずは始めてみましょう。

タイミング法は基礎体温表や超音波検査などから排卵日を予測して、性交渉をもつ効果的なタイミングをアドバイスいたします。

基礎体温の計測

妊娠を目指す上で、基礎体温の計測は基本となります。まずは、ご自身の低温期と高温期を把握しましょう。

3ヶ月ほど計測を続けると、生理のリズムがわかってきます。こちらをもとに、排卵の予測をしていきます。

基礎体温を測るポイント

  • 婦人用体温計を使用する
  • 朝、目が覚めてすぐに測定する
  • 最低3カ月ほど計測を続ける

ちなみに、基礎体温を計測するのがストレスとなってしまう方は無理しなくても大丈夫ですのでお気軽にご相談ください。

排卵検査薬の使用は?

基礎体温の計測をすることに加えて、排卵検査薬を使うことによって、より正確に排卵日を把握することができると考えられています。しかし、しっかりと陽性になる方ばかりではありませんので、そのようなときもお気軽にご相談ください。

タイミング法の回数の目安は?

不妊治療の第一歩であるタイミング法ですが、妊娠するまで何度も行えば良いというものでもありません。年齢にもよりますが、健康なカップルが排卵のタイミングを狙って性交した場合には、6周期までに約9割の人が妊娠するといわれています。

ただし、不妊検査にて何らかの異常を認めた方やご年齢によっては早期にステップアップを勧めることもございます。

タイミング法を続けていくか、ステップアップするかについても一人で悩まずに、まずはご相談ください。

人工授精

人工授精(AIH)は、排卵のタイミングに合わせて、採取した精子を子宮内に注入する不妊治療のひとつです。

人工授精(AIH)の方法

通常、腟内に射精された精子は子宮頸管を移動して子宮内へと向かいますが、精子の運動性や数が少ない場合や腟内射精ができない場合、また、腟内に射精ができても子宮頸管で精子の侵入がブロックされてしまう場合には人工授精の適応となります。

人工授精(AIH)では、細いカテーテルを腟内から子宮内腔まで挿入し、洗浄濃縮した精子を直接子宮内に注入します。

ただし、精子の数や運動率がある程度必要になってくるため、人工授精が有効かどうかは、医師に相談されることをお勧めします。

なお、タイミング療法および人工授精は、卵管の通過性があることが前提条件となっています。

人工授精の流れ

事前採血

当院では人工授精・体外受精を行う場合は、ご夫婦ともに感染症採血が必須となっております。感染性採血の結果は1年間有効とします。他の医療施設で、1年以内に感染症検査をしている場合、そのデータをお持ちいただくことで省くことも可能です。

診察

月経2~5日目、または月経周期を考慮して排卵の2日前くらいに来院していただきます。

排卵時期の予測

卵胞の大きさや子宮内膜の状態などから人工授精する日を予測します。排卵を促すために注射を使用する場合もあります。

人工授精

当日、自宅で精子を採取していただき、洗浄・濃縮を行った後、カテーテルを用いて子宮内に直接注入します。必要に応じて、数日後に排卵確認や黄体ホルモン値の測定を行うこともあります。

人工授精の当日にはご主人の保険証が必要ですのでご持参をお願い致します。(奥様の代理提出が可能ですのでご主人の来院は不要です。)

妊娠判定

人工授精施行後から3週間経過しても月経が来ない場合は妊娠の可能性がありますので、自宅で尿検査により妊娠判定を行ってください。

事実婚(未入籍)で不妊治療をご希望される方へ

当院では事実婚(未入籍)夫婦が不妊治療を希望される場合には、生まれてくる子の法的地位の安定のため、それぞれ別の方との婚姻関係がないこと、夫婦として双方が不妊治療にのぞむ意思があることを確認させていただいております。

必要書類、同意書の提出がない場合には治療は受けることができませんのでご了承ください。

事実婚(未入籍)夫婦が不妊治療を希望する場合、初診時に夫の来院の有無に関わらず 夫婦のカルテを作成しますので、夫婦それぞれの保険証をご持参ください。

必要書類

  • お二人それぞれの発行日からの3か月以内の住民票
  • お二人それぞれの発行日からの3か月以内の戸籍謄本
    住民票と戸籍謄本はコピーを取らせていただいて後、原本はお返しします。
  • 事実婚夫婦治療同意書

                      

東京都による助成制度(東京都在住の方対象)

東京都では不妊検査の費用を、夫婦一組につき1回限り、5万円を上限に助成する制度を実施しております(タイミング療法および人工授精までの一般不妊治療)。

初診時からの不妊検査にかかる費用負担を軽減できますのでご利用ください。

なお、ご利用にあたっては、都の指定する要件を満たす必要がございます。

助成制度の詳細なご案内は、こちらの東京都のホームページをご覧ください。

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